友人と一泊二日で京都に行った
あまりにひどかったので記録しておく
メンバー
全員中高の同級生である。中高一貫の男子校育ちの我々はやたらと結束が強い。同じ学校で同じ学年であったというだけで友人というには十分だ。メンバー紹介は下記のとおり。
俺
高校在学中に留年したため他メンバーとは学年が一つズレている。卒業後ヒモとホストのハーフとして29歳までを過ごす。その後改心してITエンジニアっぽい職に就く
K君
富豪。推定年収10億。中高の6年間で交わした会話は、多分おはようとかだけなのだが、最近職種が近しいらしいという繋がりでたまに飲みに行く仲になった
T君
東大修士→ギガ外資のエリート。顔もよく客観的にいってすべてを与えられた人間だと思っているが、女運がない。K君と一緒にたまに飲みに行く仲
M君
高校卒業後会ったことがない。なにをしてるのかも知らない。バスケ部だったような気がする。程度の仲
まず、本企画が開催された経緯を俺は知らない。正確には、覚えていない
どうやら、K君とT君と浴びるように酒を飲んでいるときにノリで修学旅行しようぜ!という話になったらしい。
そういえば言ってた気がする。なにをしに行くのかはさっぱりわからんけど言ったからには行こうじゃないか
多忙なメンバーでありながら奇跡的に日程の調整に成功し、日程はあっさり決まった。10月17日~京都に行こう
旅行プランの策定
京都になにをしにいくのか決めよう
T君は言った
仏閣巡りをしてもいいし、京大にいくのもいいよね
そうだ。さすがは東大生。アカデミックな発案だ。それがいい
K君は言った
計画なんかいらん
我々の旅行はノープランであることが決まった
宿と交通手段の確保
俺は新幹線付きの京都ツアーみたいなの取ればいいんじゃないかと思っていたのだが、どうやらM君は京都住みらしかった
全然覚えてないけど、修学旅行しようぜ!→京都にM君がいるから会いにいこう!京都に行こう!
という経緯だったらしい。覚えてない
ということは、宿だけ確保すれば大型連休なわけでもないし新幹線はどうにでもなるだろう。とにかく宿を決めよう
M君は言った
電話でサクッと決めちゃいます?
そのとおりだ。宿を選定するにあたっては予算をすり合わせたり、和洋どちらがいいか、そもそも一人部屋でないと寝れない人もいるかもしれない。話し合って決めるのが早いだろう
そうしよう!とみんなは答えた
誰も電話しなかった
めんどくさくなった。ちなみに俺は酔っ払ってるときにそうだ電話がいい!と思ったのだがシラフに戻って電話するのがめんどうになった
電話案は潰えた
話が進まない。出張慣れしていそうなK君、なにか提案はないか?
K君は答えた
リッツかアマン
おすすめの酒を聞いたらクリュッグかアルマンドと答えられたようなもんだろう。前世がキャバ嬢とかだったのだろうか
男四人で高級ホテルに泊まる意味が全然わからんけどいいだろう。せっかくの機会だし贅沢しても許される。独身貴族の財力を存分にみせつけてやろうじゃないか
ここでMくんが口を挟んだ
お手頃価格希望です
そのとおりだ。男四人で泊まるのなんて数千円程度のホテルで十分だ。君が最も正しい
いくらかの調査の後、せっかく京都だし町屋というのにしよう。話し合うだけムダだから予算内で口コミサイトランキング一位のものにしよう
俺はノリと独断と酒の勢いで予約を取った。町屋というのはなんだか知らんけどきっと京都らしさを感じられる和風な旅館なのだろう。楽しみだ
宿が決定したのは、前日の18時だった
一日目
11時くらいに品川集合で。ということで決まった
俺は新幹線の切符の買い方及び乗り方にすこぶる不安があったため、余裕をみて10時半を目指して品川に向かった
誰もこなかった
K君は、朝方まで飲んでいたことによる寝坊
T君は、彼女に携帯を隠された
とのことだった
俺は品川で立ち尽くした
まあいいさ。小一時間お茶でもしてれば来るだろう
こなかった
諦めて一人で新幹線に乗った
なぜ俺は一人で新幹線に乗っているのか。どうしてこんなことになったのか考えると酒と女のせいだった
酒と女はクソだと思いながら飲むビールは少ししょっぱいような気のせいがした
一人、先行して宿に着いた
町屋ではなかった
予感はしていた。この旅行はなにもかもがうまくいかないと
しかしまあ、広くて綺麗な部屋だ。男四人で泊まるには十分だ。なにも町家でなくともいいだろう。寝るだけだし
そう考え、宿でビールを飲みながら友人を待った
しばらく待つと、M君が宿に到着した
おお、実に15年ぶりの再会だ。元気だったか。今はなにをしているのか。そういやバスケ部で一緒だったよね
テニス部だった
そうだったか。一体高校出てからはなにをしていたのか
彼はどうやら長いことアメリカで勉学に勤しんでおり、ごく最近京都の大学で教員として働くことになったらしい
まだ全然京都に詳しくないどころか、もはや日本の文化についてこれていないようだった。ならば存分に日本を楽しんでもらおう
俺は代表的なジャパニーズカルチャーたるホストとはなんたるかを話したりなどしているうちに、K君が合流した
夕飯はどうするか。京都といえばなにを食うべきか。歓談するうちに、我々は外に出るのがめんどうになってきた
コンビニで済ませることになった
大学生の夢のような量の大量の酒とおつまみを買い込み、酒を飲んでいるうちにT君が合流した
彼女をありとあらゆる手段をもって宥め、携帯を回収し無事京都に辿り着いたようだった。ホスト時代に同様の経験を幾度となくしてきた俺はひたすら彼に同情した
彼は宿内にとっ散らかった酒をつまみをみて、宅飲み状態と化したことを理解し酒を飲み始めた
22時過ぎ
いい感じに酒も回ってきたあたりでT君は言った
京都ガールと話したい
それはそうだろう。癇癪を起こした彼女という難関を突破し京都くんだりまで来て野郎と宅飲みだけではあまりにかなしい。せっかく独身貴族で集まったのだ。夜街に繰り出すべきだ。そうでなければ不健全だ
T君は彼女にGPS監視されているため、ビル内に飲食店が連なるキャバクラなどが望ましいとのことだった
素早く支度をしいざ祇園へ
10秒でキャッチしてきたお兄さんに連れられキャバクラへ向かう
ロケーションを確認すると、一階はたこ焼き屋であったので、万一彼女に探られても「我々はどうしてもたこ焼きが食いたくなった」という寸分のすきもない論理で押し黙らせることが可能だ。完璧だ
いやあ、はるばる京都まできましたねえ!はんなりとした京都美人におおきに〜と言われたさがすごい
中国人だった
そりゃそうだ。歌舞伎町には田舎者ばかりがいるのと同様に京都の夜の蝶が京都産であるとはまったく限らない
K君に着いた女性は、凛とした空気を纏っており、乳がデカかった。これは誰がどうみても京都美人に違いないと思った
滋賀人だった
もうなんでもいい。酒を飲もう。我々は適当に入れたボトルをガバガバと飲み店を後にした
不毛だったね
K君はそう言った
まったくもって恐ろしく不毛だった。というか友人とキャバクラに行って不毛でなかった試しがない
我々は宿へと戻り、寝酒を煽り床に就いた
二日目
二日酔いにひとしきり絶望した後、朝食をとった
K君はモーニングにハイボールをそえていた。富豪界では流行っているのだろうか
今日は、T君が事前の綿密な調査の上夕飯の予約をしてくれてある。それまでは自由時間だ。なにをするべきかを議論した
T君から発案があった
河床に行きたい
俺もずっと行ってみたかった。行くしかない
いいねいいね。河床に行こう。貴船というとこがいいらしい
河床は9月までだった
考えてみれば当たり前である。あれは夏の風物詩だ
まあ川床がなくてもいいじゃないか。川に面したいい感じの席のある飯処みたいなのがなにかしらあるだろう
T君はカーシェアリングシステムというのを活用し実にスムーズに車を確保し、華麗な運転テクニックで我々をエスコートしてくれた。ちなみに俺とK君は免許を持っていなかった
貴船神社は、神社だった
神社の愛で方がわからないので、それ以上の感想がない
K君は参拝をしていなかった
しないの?と聞くと自分のことは自分でなんとかするべきであって祈ることではないとのことだった。まったくもってそのとおりだ
俺は参拝のマナーがわからなかったのでやめておいた
しばしの散策の後、昼食へと向かった
御年97歳のお婆ちゃんの客引きに釣られ、適当な店に入った
鰻御膳を頂くことにした。俺は鰻にはちょっとうるさい。京風の鰻がどんなもんかワクワクしながら口にした
なんかパサパサしてるし山椒の風味しかしない気がするんだけどこれが京風の鰻ですか。なるほど、薄味で上品ですなあ。うまい
タレをかけていなかった
T君はキレていた
昼食の後、さて次はどうするか勘案した結果、鞍馬寺に行くことになった
寺とか全然知らんけど鞍馬天狗というのは聞いたことがある。かつて天狗がいたに違いない
鞍馬寺とは、牛若丸こと源義経の修行の地であり鑑真の弟子が天台宗をインスパイアして「すべての生命の生かし存在させる宇宙エネルギー」を祀っているまったくもって霊験あらたかな胡散臭い寺であるようだった
以上の情報から導き出せる結論は、源義経は天狗に宇宙エネルギーを活かした独自の闘法を伝授され、それによって弁慶を打倒した。ということである。俺は歴史知識を20年ぶりにアップデートした
ケーブルカーに乗り込むと、その車両名は「牛若Ⅳ號」であった。いやそこは「牛若肆號」とかの方がおさまりよくない?
寺や神社に訪れると、いつも困惑する
どういう感情を抱くのが正解なのだろうか。おっきいですね。昔の人ってすごいね。以外の感情を持ったことがない。寺と神社の区別もつかない。今俺がなすべきことはなんなのかわからない
とはいえ、見晴らしもよく、いい感じの場所であった。紅葉シーズンに来ればより綺麗なのだろう。また来よう
下山した時点で15時。夕飯の予約は17時半から。すなわち2時間以上空きがある。どうするか
昼キャバしかないだろう
我々は初めて意見の一致をみた
しかしながら、土産を買ったり、京都の街をぶらぶらしているだけで予想以上に時間が消費された
やることがなくなった時点で17時半まであと40分。20分コースの昼キャバなどがあれば即座に行っていた可能性が極めて高いが、ここは冷静にちょっと休憩しよう。スタバに行こう。ということになった
スタバでボーッと30分間休憩をしたのち、いざお店へ
ここは、T君の調査によるところの地元の方おすすめの名店らしい。期待に胸が膨らむ
この店に関しては、ツッコミどころがなにもなかった。ものすごくおいしかった。
ここにきてようやく正しい京料理にありつけて感無量の我々。酒も進み、話も盛り上がった
すげえ楽しかったな。こういう企画に参加してくれるメンバー増やしたいよね
すなわち、暇だから昼キャバで時間を潰そうという思想に拒否反応を起こさなければ誰でもいい
K君ならどうだろう。S君ならどうだろう?そんな不毛な会話をしている内にK君は終電の時間がきた
まったく話したりなかった気がするが、とにかく楽しかった。ありがとう。また東京で会おう
そういって、彼は帰っていった
M君は、旧友と日本で馬鹿騒ぎするのが久しぶりだったようで、ご満悦の様子だった
次は東京に行くよ。めちゃくちゃ遊ぼうじゃないか
そう約束し、俺とT君も帰路についた
新幹線では、疲れ果ててシンプルに寝ていた
品川駅で、またな。年末には会おうな
そう約束し、解散した
俺も自宅に帰りつき、思い出を反芻する
実に楽しかった。本当に楽しかった
あれ、これ東京でよかったんじゃね?